毎回の例え話です。もし、あなたに調理経験があり、調理という行為自体が
好きだったとします。ただ、だからと言ってやみくもに調理するということでは
ないでしょう。恐らく、調理をするには都度目的があるはずです。
例えば以下のようなケースが考えられるのではないでしょうか？
・自分が空腹なのでお腹を満たしたい
・お客様がいらっしゃるのでもてなしたい
・おいしい食材が手に入ったので、素材を生かせる料理にしてみたい
などなど。

つまり、同じあなたという一人の人間であっても、目的が違えば
生み出す料理も異なるでしょうし、当然使用する道具も異なってくるはずです。
これは目的が変われば道具、すなわち手段も変わるということです。
包丁のように共通する道具もあるかもしれませんが、厳密に言えば
中華を作るのであれば中華包丁でしょうし、刺身を作るなら刺身包丁でしょう。
ということは道具それ自体が重要なのではなく、得たい成果が得られれば
道具自体に意味はないということです。

もちろんプロは道具にこだわります。それこそイチローなどのような
超一流と言われる方々は自分の道具を徹底的にメンテナンスするだけでなく
様々なこだわりがあると聞きます。
ただし、だからと言ってイチローが市販の量産品を使用すると成果が出せないのか
と言えば違います。
本人が満足できるようなパフォーマンスに至らないというだけで、
実際の観客からしてみれば大抵の方々が満足することでしょう。

確かに道具も大切なのかもしれませんが、そこにこだわれるのは
超ごく一握りの人だけ。それこそイチローのレベルで自分の人生の時間を
賭けてきたような人だけだと言えるでしょう。
プロとしては当然、と言えなくもないでしょうが、実際にそこまでの意識で
普段の業務に取り組んでいる方々ってどのくらいいるのでしょうか？
会社組織で言えば経営者くらいではないでしょうか？

とした際に、介護業界に目を移してみます。
介護業界において様々な資格である研修もまた道具の一つに過ぎません。
ましてや行政が所定のカリキュラムを組み、登壇する講師陣もどこの
スクールで受講しても大抵同じ。使用するテキストも同様となれば
いわゆる量産品しか出回っていないことになります。

もし差別化が販売店側にあるとしたら
・販売のための立地
・販売価格
くらいのものでしょう。

ところが面白いもので、量産品を使用していても得られる成果は全く異なります。
それはその道具を使用する人の目的が違うからです。
そしてこの目的は人それぞれ。
中には介護業界で勤務はしているものの、研修という道具を必要としない
という方々もいます。それは当然です。その介護職の方にとっては
不要なものだからです。

仮に「介護職員たるもの、最低限このレベルの研修は受講しておこう」
という価値観を押し付けたとするとどうでしょうか？
これはいい食材が入ったからこれを喰え、と満腹状態の利用者の口に
食べたくない料理を押し込む虐待行為と同様と言えるでしょう。
もちろん、介護業なのだから、介護サービスを提供出来ないと困る
というのは当然あるはず。
このバランス感覚が一番難しいところなのかもしれません。

少なくとも研修に限らず、勤めている事業所やあるいはそもそも
介護業という仕事自体も道具に過ぎません。
道具にはそれに応じた使用方法があるので、間違った使い方をすると
望むような成果が得られないわけです。
このように考えると研修の目的はあくまでも使用方法を伝えること。
それをどのように展開するかは一人一人の人生の目的次第なのでしょう。

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