これまで主従関係という言葉から介護における自立支援の
在り方について考察をしてきました。
もちろん言葉には人それぞれの過去の体験からくるイメージが
付きまとっていますので、中には主従関係という表現では
おかしいと感じられる方々も一定数いることでしょう。

しかし、そんな些末なことではなく本筋をとらえてみようという
コミュニケーションの基本スタンスに立ち返っていただければ
過去4回にわたって展開してきた内容も伝わるものと思います。
シンプルに言ってしまえば「自分の人生を生きる」ということは
「自分と自分以外」に分けて考えたときに、自分が主体となって
自分以外のものに対して働きかける、ということです。

そして料理における包丁という道具のように、自分以外のものについては
それぞれ機能が異なります。まさしく千差万別なわけです。
そして包丁の使い方を誤ると大けがをしたり、人を傷つけたりします。
同様に自分以外のものに対しての働きかけ方も誤ると
自分が傷ついたり、人を傷つけたりします。

そして自分以外のものに対して働きかけた結果、上手くいっても
大けがをしても、人を傷つけてしまい、嫌われたとしても
全て自己責任だということです。
その責任を引き受けるからこそ自分の人生を生きるということになるのです。
当たり前の話ですが、なかなかいきなりこの結論を出してしまうと
頭では理解できても腑に落ちないという方々がいらっしゃるので
過去4回にわたって色々と展開しました。

介護に関して言えば、介護というビジネスを選択して、
そのビジネスを通じてお金を稼ぎ、自分自身を幸せにする、
という目的を持って行動するのであれば、それは自分が
選択したことです。
「介護なんてビジネスとしてダメだよ」なんていうことは
自分が料理の際に包丁を選択していながら、包丁を使おうとしないだけなので
行動しない言い訳に過ぎません。

当然自分で選択したことですから「この利用者はひどい」
という結果も自分自身が選択したことです。
本当に嫌ならやめればいいのです。
「もし自分が見放してしまったら、この利用者はどうなるの？」
なんて言うだけ無駄。見捨てればいいだけです。
なぜなら、自分の人生を生きる時に使えない道具と判断したのに
その道具に固執するのは「自立支援」ではなく単なる依存だからです。

恐らく自分自身の価値が低いことを無意識で認識しているからこそ
その利用者を断ると自分には仕事が回ってこないと思っているのでしょう。
だからその利用者を言い訳にして「ひどい」と言いながらも
利用しているのです。
言い換えるなら自分の依存心を守るために利用者を利用しているのです。
当然そのような方が支援する介護は自立支援にはなり得ません。

じゃあ、いやな利用者は断ればいいの？と言えばその通りです。
しかし断り続けた結果も自己責任として受け入れる覚悟があるかどうかは
求められます。
さて、野球選手でイチローという選手は道具を非常に丁寧に
手入れすることで有名です。

もちろんあれだけのプロなのですから、道具が変わっても
必ず成果を出すことは出来るでしょう。
それでも自分のグローブを丁寧に磨いたり、雑には扱わなわなかったと言います。
プロの姿勢とはそのようなものです。
介護業という道具を選択した際に、実務者研修であったり、
介護福祉士というのも自身を成長させるための道具の一つです。

そして、どのような利用者を受け持つことになったとしても
一定の成果を出せるのがプロですが、自分が関わっている
「グローブ」に対しては丁寧に扱うこともまたプロの姿勢なのです。

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